赤い狼 四
棗から視線を外してその横に居る銀に視線を移す。
銀は何か言いたげな表情をして私を見ていた。
でも私は、それに気付かないフリをする。
「何もなかった。」
「じゃあ何で昨日、お前は家に居なかったんだよ。」
もう一度、さっき棗に言った言葉を口に出すと、銀が素早く反応した。
銀の言い方からすると、昨日あれから銀達は私の家に来たらしい。
…少し厄介だ。
「祐お兄ちゃんと一緒に実家に帰ってたの。」
少し考えて口に出たのは、祐と昨日は行動を共にした事だった。
多分、祐だったら察して昨日は私と一緒に行動を共にしてた。と言ってくれる筈だ。
この場ですぐに祐に確認されるとしても。
祐は勘だけはぃぃから。
ジッと鋭い銀の目線から目を逸らさずに見つめる。
嘘をついていない、という気持ちを込めて。
「…今度からはちゃんと俺等に言え。」
すると、今まのやり取りを黙って見ていた隼人が静かに口を開いた。