赤い狼 四
「ま、妃菜ちゃんを見付けたら文句をたくさんぶち当てりゃあいい。
ただし、手は出すなよ。女に手は上げねぇ。これは《SINE》の決まりだからな。」
「分かってる。」
まだ眉間に皺を寄せて難しい顔をしている奏を見て、口から息を小さく吐き出す。
一応は分かったみてぇだが、まだまだだな。時間が掛かりそうだ。
まぁそれは俺も、だが。
誠也、お前が居なくなって色んな奴が悲しんで、苦しんでるぞ。
真上に登った太陽を見上げる。
眩しくて目を細めた。
もう昼か。早ぇな。
「奏。飯でも食いに行くか。」
「銀の奢りなら。」
「たまにはお前が奢れよ。」
「やだね。」
「ケチ。」
口を尖らせる俺に、ケチは節約になるんだぜ、と得意気に笑って言う奏の後を歩く。
「何でもプラスにとるんじゃねぇ。」
「ポジティブでいいだろ。」
「ああ言えばこう言う。ガキか。」
「何とでも言え。」
ふふん、と何故か勝ち誇ったような表情をみせる奏の頭を、両手でこれでもかというくらいグシャグシャに掻き乱す。
コイツ、たまにマジで腹が立つ。