赤い狼 四
「隼人っ!」
「ぃぃのか?隼人。」
隼人の言葉に銀と棗が焦った様子で隼人を見る。
でも、隼人は二人をそのまま無視して私に話し掛ける。
「稚春。お前は俺の女であり、《SINE》の姫だ。だから俺等や《SINE》の皆はお前を守る。
でも嘘をついたり裏切ったりしたら、いくら稚春でも許さない。
いや、そんな稚春だからこそ俺等に隠し事するような事は"許されない。"分かるか?」
隼人が私の髪の毛を触る。
ゆるゆると髪の毛が小さく揺れる。
私は瞬きを一回して隼人を真っ直ぐと見た。
「分かってる。」
「…そうか。ならぃぃ。」
すると隼人は私の髪の毛から手を離し、またソファーに体を深く沈めた。
「ぃぃのか、隼人。」
「あぁ。稚春が何もなかった、っつってんだ。信じてやれ。」
「でも「俺の言った事が聞こえなかったのか。」」
納得がいかない様子の銀に隼人が鋭い目付きで睨む。
銀はもう何も言わなかった。
でもその代わり、私をさっきよりも鋭く睨むように見つめてきて。
居心地が少しだけ悪くなった。