赤い狼 四
「い、いや。別に朋さんおだてたりとかしてないから!」
「動揺すんな。つーか朋さんおだててたからって、怒ったりしねぇ。」
壁に寄り掛かって腕を組んで偉そうにしている目の前の男は、
お前は俺を何だと思ってんだ、
と眉間に皺を寄せて私と朋さんを交互に見る。
相変わらず綺麗な顔だこと。
「怒りんぼうさんです。」
「お前の毛、毟ってやろうか。」
「どこの毛!?」
「ついに稚春も下ネタが言えるようになったんだな…!」
毟る、とか真顔で言われて危機を感じた。
ほ、本気だ。
タラリと冷や汗を一筋流していると、壁から背を離してスタスタと近寄ってくる悪魔様。
あぁ、本当。いつからそんな酷い奴になってしまったんでしょうかねぇ。
目を細めながら近付いてくるその人を見る。
そんな私の横で朋さんは、しみじみと私の成長について語っていた。
そう、さっきの私の台詞の後に喋った台詞をもう何回も。呟いている。