赤い狼 四
「お~い、そんままやったら拓磨いつか死んでまうで。」
一秒に五回のスピードで拓磨を揺らしてるんじゃないかと疑ってしまうくらい、高速に揺らしていると龍が苦笑いしながら拓磨の背後から顔を出してきた。
お、龍そんな所に居たんだね。気付かなかったよ。
「だって背中見せろって!無理!!それだけはしたくない!」
「駄目やって稚春~。背中流しは《VENUS》の伝統なんやから~。」
「伝統~~?」
本当か?と疑いの目をニヤニヤと笑っている龍に向ける。
嘘だ。その顔は嘘だ。ニヤニヤしてる時点で怪しいわ!
「伝統とか私には関係ないし!塚、マジで背中は見せたくないの!私のツーシークレットなの!!」
「そこ、トップシークレットじゃねぇ?」
伝統が嘘だと気付いて龍に声を張り上げると、要が何言ってんだ、という表情で私を見てきた。
いや、だって本当の事だもん。私のトップシークレットは婚約者が居て、あと一年経ったらこの街を出ていく事だもん。
だから、背中の傷はツーシークレットって事で。
ツーシークレットだから無理!と鋭く睨むと龍が、分かった分かった!、と眉を下げた。
迷惑掛けちゃったかな。