赤い狼 四
――その瞬間。
「ぎゃあぁあーーー!!!」
「いってぇええぇ!!」
二つの大きな叫び声が響いた。
そして、同じ部屋で寝ていたらしい他の五人はもちろんその声で勢いよく起きてきて。
「な、何だ!?」
「どないしたんや!」
「うるせぇぞ!!」
「首絞められてぇのか。」
「どーしたの?」
五人は個性豊かな台詞を吐きながら、鳳陽の頭上に手を挙げている私と、頬を押さえて猛然としている陽に視線を向けた。
「稚春が急にビンタしてきた!」
「だって陽が抱きついてきたんじゃんか!!」
痛そうに顔を歪める陽の顔を押しながら怒鳴りつける。
そう、陽は私にいきなり抱きついてきたのだ。そしてそれに驚いた私がビンタで陽を退けた&陽の目を覚まさせた。
でも私が予想していたよりビンタが痛かったらしく、陽は涙目。だけど私の怒りはおさまらず――――今に至る。
「ち、稚春………その辺にしといてやれ。じゃねぇと鳳陽が可哀想だ。」
相変わらずぐいぐいと陽の顔を押す私に優悪が困った表情をみせる。
それに便乗して陽が、そうだぞ!と珍しく強気で喋ってきた。
本当に珍しい。