赤い狼 四
「だって……、」
「鳳陽も好きで稚春なんかに抱きついたんじゃねぇと思うぞ?鳳陽は寝てたんだし。」
力を入れてはいないけど陽の顔にまだ手を置いて言葉を濁すと優魔が眉を垂らして私の肩に手を置いた。
……何だと?
優魔の言葉にピクリと眉が上がる。
今、慰めているようで私の事バカにしたよね。完璧したよね。"なんか"って聞こえたんですけど。しかも"好きで抱きついたんじゃない"って言ったよね。
よし、優魔にターゲット変更。
「ゆーうーまーーー!!!」
「うぉあ!?」
完全に私の事をバカにしていた優魔にブチンとキた私は枕を優魔に力いっぱい投げつけて髪を引っ張った。
「いだだだだっ!!抜ける抜ける!」
「お前の長い髪なんて抜けてしまえ!」
「ちょ、モテなくなるだろうが!!」
「毒舌男に堕ちる女の子が減って私は清々するわ!!オーホッホッホッ!」
「キッモ!!!」
「何だってぇ!?」
ゴロゴロゴロゴロと皆の布団の上を転がりながら髪の毛を引っ張り合う。
皆は私と優魔がこうなる前に壁際に避難していたらしく、毛布を畳みながら呆れた様子で私と優魔の取っ組み合いを見ていた。