赤い狼 四
「うん。私、隼人の本当の彼女じゃないの。告白したわけでもないし、されたわけでもない。
同意なんてしてないのに勝手に隼人の彼女にされちゃったから、私は隼人の正式な彼女じゃないの。」
「じゃあ、そのネックレスはなんなんだよ。」
私の説明を聞いて、優魔が私の首もとを顎で指す。
その顔には"不機嫌"という言葉がしっくりくる表情が貼り付けられている。
「あぁ、これね…。」
首にかかっている長方形のガラス細工で作られたネックレスの飾りを指の腹で転がす。
「隼人がくれたんだよね。一生外すなだってさ。」
「何のつもりなのかな。」と横の髪の毛を左耳にかけながら誰にでもなく、そう問うと「俺のもんだっつー証だろ。いけ好かねぇ。」陽が腕を組んで舌打ちをした。
…俺のもの?自分の所有物だと示すために名前を書くような事しなくてもいいのに。
「私は元から誰のものでもない。隼人のものでも、他の誰かのものでも、私のものでもない。
私は必要ないから誰も取ろうとなんてしないのに、そんな取られないように証をつけるなんて。馬鹿だなぁ。」
「稚春!!」