赤い狼 四





「私は全然、大丈夫だって言っても?」



「大丈夫、大丈夫って言ってへらへら笑ってる奴が一番大丈夫じゃねぇんだよ。」




私の頭に掌を乗せた朋さんが、息が全部出きらない、でき損ないのため息を溢す。



そのすぐ後に同じようにため息を溢した。




何を言っても《VENUS》の皆は私を放っておいてくれないらしい。



視線を落とすと、さっきまで私が堪能していたグレープ味のシャーベットが紫色の液体になって小皿に溜まっている。



話している間にほどよく効いた暖房で溶けてしまったらしい。




スプーンでそれをぐるぐると混ぜながら「あーあ。」小さく呟いた。




それを見て朋さんが苦笑いを見せる。




「そんなに残念がらなくても、後でまた出してやるよ。」



「…!朋さん、大スキスキスキ~。」




眉をハの字にさせている朋さんにまたそう言いながら腕に抱きついて、上目遣いをする。




朋さん。そう言おうとした時だった。






「稚春、俺がお前を取ってやる。」






意を決したような声が、耳に響いた。





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