赤い狼 四
そして、いつの間にか私の後ろから優魔の隣に椅子を持ってきていた朋さんが「大丈夫か!?」優魔の肩を掴んで前後に揺らしている。
朋さん、めちゃくちゃ優しいな。まぁ、優魔が今回は悪いと思うから別に心配しなくても「おい!店の灰皿投げんな!俺が特注で作らせた灰皿が壊れたら弘さん泣くぞ!!」………朋さんも優魔なんてどうでもよかったらしい。
「大丈夫か!?俺の愛しの灰皿ちゃーん。」
すりすりすりすり。ピンクの灰皿に頬を擦りつけている朋さん。
その様子を呆れて見ていると、今まで黙っていた拓磨が重く長いため息を吐いた。
それにつられて私も息を吐く。
「……で、何で無理だと思った?」
そのまま、しなやかに肘を机に立てて、掌に顎を乗せる拓磨。
その動きがあまりにも色っぽく見えて、思わず見惚れた。
じっと見つめてくる透き通った黒の瞳は揺らぐ事はない。
さっきまでのおちゃらけた雰囲気も、消えた。