赤い狼 四
「だって…あの隼人だよ?手放すわけがないじゃん。私は《SINE》の姫って事に一応…なっちゃってるし。
それに《SINE》の皆、一生懸命守ってくれたりとかしてるのにそんなの、皆が悲しむでしょ。
だから、取るとか言われても困る。」
重くなった空間に自分の高い声が響く。
と、ぽつり。
「稚春を守りてぇんだったら、ちゃんと本当の事とか今の状況を隠さずに言ってるはずだろ。」
私の心を今度こそ、ぐらつかせる言葉を陽が低い声で呟いた。
それと同時にぎゅ、と私の左腕が陽に握られる。
「現に今、マイナスな考えとか自虐的な事しか浮かんでこねぇだろ。
それは稚春がアイツ等から何も聞かされてねぇから不安になってんのもあんじゃねぇの。」
ぐさりぐさりと陽の言葉が心を貫く。
「そんな事…。」
「じゃあ、稚春は今の状況は全然辛くねぇ。今のまま、《SINE》に居てぇ。そう思えるのかよ。」
「………。」
「…思わねぇだろ?やっぱり、どっかで稚春は疎外感とか感じてんだろ?……寂しいんだろ。」
「………っ、」
―――図星、だった。