赤い狼 四
きっと、見えてない。
"無"の表情をしている隼人。
最近、笑わなくなった気がする。
口数も、以前と比べてかなり減った。
最近は会話という会話なんてしない。決まって隼人は短く一言、返事を返すだけ。
人間味がない。
だから、そんな隼人に見つめられた今日はゾッとした。
背筋にヒヤッと何かが一瞬、走って。これまで隼人と長く付き合ってきて"恐ろしい"と思ったのは初めてだ。
チクタクチクタク。
時計の針が動く。
妙に静かだ。考え事をするのには丁度いいけど、今日は何だか落ち着かない。
そわそわ、する。
とっくの前に起動していたパソコンに目を向ける。
………この違和感は何だ?
不思議に思って取り敢えず部屋の中を見渡す。
それでやっと気が付いた。
「居ないのか。」
いつも笑っている女の子の姿を探す。
くるくると表情が変わるあの子を。
真っ直ぐな瞳で見つめてくる、黒髪の女の子。
帰ってくると居るのが普通になっていたのに。
居ないと寂しい。
――今日も、姿を見れないのかな。