赤い狼 四






「稚春…。」





呟いて、あぁ、そういう事かと納得した。




隼人が何であぁいう目をするのか分かった。正確に言えばあぁいう目になった、だけど。



この際どっちでもいい。




かつて大好きで、想いを未だに捨てきれない女、妃菜が現れて。



混乱しつつも妃菜の行方を探す隼人。



そんな隼人は妃菜が再び現れるまで稚春に明らかに想いを寄せてた。




隼人にとって稚春は《SINE》の姫の証のリングを渡してまで繋ぎ止めておきたい女。



大事に、していくつもりで。これからゆっくり恋愛していく予定だったんだろう。




―――でも、妃菜が現れて状況が変わった。





好きだった妃菜と好きになった稚春。




捨てきれない想いと、芽生えた想い、どちらを取るか悩んでいるのと―――あの事件を思い出しているんだろう。





悔やんでも悔やみきれない、あの事件を。




でも、あれは《SINE》の誰も悪くない。




隼人は自分のせいだと今も思ってるだろうけど。それは違う。





< 297 / 457 >

この作品をシェア

pagetop