赤い狼 四





本当に分かってない。




昨日、妃菜ちゃんに逢ったのに今日隼人の顔を見なくちゃいけないっていう私のこの複雑な心境を。



って、棗は私が妃菜ちゃんに逢ったこと自体を知らないんだから私の心境を知らなくて当然か。




でも、察しがいい棗の事だ。だからきっと、"《SINE》の皆が妃菜ちゃん探しで最近忙しくて私と会えない"という事を私が知ってるのは気付いてるだろう。



だって私が《SINE》の皆に聞かない訳がないから。



別に《SINE》の総長や副総長、幹部が教えてくれなくても日頃仲良くしてもらってる下っぱさん達に聞くし。


職権乱用、みたいな感じではないけど少しだけ隼人の彼女の地位というものを利用させてもらう事だって出来る。




隼人達からしたらそれは嫌だろうけど、仲間なのに何も話してくれないで会う事もあまりしてない。っていう酷い事をしてるんだからこれくらい許してほしい。まぁ実際には《SINE》の人たちには聞いてないんだけどね。


だって私には不良の情報を持った女が二人居るんだから。実と香という名前の友達が。





「まぁ、そんなにむっすりしないで取り敢えず中に入ろうよ。」



「今、面倒臭くなったんでしょ。」



「行こうか。」





考え事をしていたため顔が笑ってなかったらしい私の指摘を見事にスルーした棗は、穏やかに笑みを見せて隼人達が通っている学校、神皇へと進んでいった。





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