赤い狼 四
「……大丈夫だ。今日もちゃんと送らせた。」
「そうじゃない。」
箱から一本出して火をつける。
そのまま、貸してくれ。と言ってきた棗にジッポを渡す。
「稚春の身は大丈夫で当たり前だろ。俺が言ってんのは稚春の精神状態。」
煙草に口をつけて、思いきり吸い込む。苦さを含んだその味に目を細める。
「精神状態?」
「分かんねぇの?」
「………。」
怪訝な表情を見せる隼人に薄い笑いを浮かべる。
それでも隼人は未だに怪訝な表情を崩さない。
だから、あぁ本当に分かってないんだな、と。虚しくそう思った。
「最近、俺ら逢ってねぇんだぞ?全員が揃うことなんてまずない。」
「それは仕方ねぇ。」
「それは、な。でも俺らが仕方ないって思うのは妃菜探しで忙しいからだって分かってるからだろ?」
「……確かに、な。」
「それを知らない稚春は、何で俺らが揃って逢えないのか。何で下の奴らが忙しそうなのか。
何も分からねぇよ。だって知らねぇもん。でも、それって不安じゃねぇ?」
キンッとジッポを弾く音がする。棗の煙草に火がついた。