赤い狼 四
「…不安だったら普通どうする?」
「………。」
「俺らだったら調べるよな。だったら稚春も調べるはずだ。」
「………。」
「きっと、稚春は何もかも知ってる。俺らが誰を探して、その探してる奴と俺らがどんな関係なのかも。」
隼人が静かに息をつく。
その音がシンとした部屋に響いた。
「結局、何が言いてぇ?」
「何もかも知ってる上で、稚春は俺らと接してんだよ。自分には何も話してくれない人達をまだ、"仲間"だと思ってくれてる。
何で話してくれないんだ。って責めてもいいのにそれさえもしてこない。それって、ぶつけりゃいいのに我慢して、不安をより募らせてるってことにならねぇ?」
隼人の瞳がゆらゆら揺れる。
その瞳が俺を曖昧に捉えて、
「言えってか?」
消えそうな声が聞こえてきた。
「あぁ。隼人が稚春のことを"彼女"として、"仲間"として見てんならな。」
「……無理だ。」
「何でだよ。」
「無理だ。」
「理由を言えよ!!」
「黙れっ!」
ミシミシと部屋が鳴る。
俺と隼人の声を吸い込んだ壁が、微かに揺れた。