赤い狼 四
「黙れ…。」
さっきと同じ言葉を隼人が呟く。
黙れ、だなんて無理に決まってる。
「はや「今は妃菜の話をしてんだよ。」」
口を開く俺を漆黒の瞳が制する。
黙れ、と。
それを目にした俺は従うしかない。だけど、今回だけは。これだけは。
「考えとけ。」
譲ることはできそうにない。
「…あぁ。」
短い返事を聞いて前のめりになっていた体をソファーに投げ込む。
その返事が聞けただけで十分だ。
そんなことを思いながら。
「妃菜はまだ逢ってくれねぇらしい。でも、今日から一週間の内に必ず逢いにくると言ってた。」
どうでもいい行方不明の女の話を耳に入れた。
連side~end~