赤い狼 四
途端にさっきまで和やかだった空気が揺れて、重い空気に変わる。
二人の顔から笑顔が消えた。
「同一人物…?」
優吾が静かに箸を机に置いて呟く。それに口では何も言わず首を縦に振った。
「同一人物になろうとしてねぇよ。」
「してるよ。今は違うけど私と初めて逢った時、喋り方も雰囲気もソックリだったよ。」
「敬語だったんだから似てて当たり前だろ。」
「じゃあ雰囲気は?」
「それは稚春の勘違い。」
断固として私の言うことを認めようとしない優吾。
気付かれたくないことだったのかもしれない。だって瞳が揺れてるから。
触れてほしくないのかも。
その他人を自分のテリトリーに入れないというのは私にもあるから分かる。実際に私のことは《SINE》の皆にもあまり話したことがない。というか話してない。
でもそれは私が高校を卒業したらこの街を出ていくから言ってないだけであって。
まだ《VENUS》に居続ける優吾と慶吾とは状況が全く違う。
だから。
せっかくの"仲間"にも偽るのは止めてほしい。
殻に閉じ籠らないでほしい。