赤い狼 四
「心の中?」
「うん、私は拒絶したりしないよ。優吾は優吾。そうでしょう?」
「―――…っ、」
優吾の瞳がさっきよりも大きく揺れる。
それから少し目を伏せて、口を少し開く。でも、すぐに閉じられた。
ためらっているなかな。
「優吾、大丈夫。大丈夫、だよ。」
優吾のためらいが、私に拒絶されるというものだと気付いて優しく笑いかける。
すると、優吾が私の手をぎゅうっと強く握ってきた。
「あのな……、俺「優吾。」」
唇が震えながら言葉を私に伝えていた時。
静かに優吾の声を制する声が聞こえた。それはカタン、と音をたてながら箸を置いた慶吾で。
「俺の許可なく言うのか。」
「慶吾、俺はもう苦しい…。」
「だからって俺とお前の問題を稚春に言うのか?」
「………。」
沈黙が流れる。
私は息を殺して二人の様子を見ていた。
苦しいと言う優吾。
部外者に話すなという慶吾。
二人は何を抱えているんだろう。
「…今は話すな。」
「………?」
「稚春、今度ちゃんと話しにくるから。だから今はまだ癒して。」