赤い狼 四





と、




「あ。」




《SINE》に行く前に聞こうと思っていたことを思い出して足を止めた。



雷太がそれに気付いて「どうしたんスか?」一番に駆け寄ってくる。


思い出しただけなのに心配した顔で寄ってくる雷太や雷太以外の不良さん達に申し訳ない、と眉を垂らした。




「ちょっとさ、聞きたいことがあるんだけど。」




少し遠慮気味に言うと、雷太が首を傾げる。




「妃菜ちゃんのことなんだけど…。」





ピタリ。



私の周りでざわざわと動いていた空気が止まった。





「………。」





しばらく続く沈黙。




それがとても重く感じた。





「妃菜ちゃんって…、妃菜さん?」



「た、多分…。」





ごくりと喉を鳴らした雷太が私の顔色を窺いながら聞いてきて、曖昧な返事を返す。



私の知ってる"妃菜"と雷太の知ってる"妃菜"はきっと同じだ。《SINE》は女の子出入り禁止だから不良たちが全員知ってる"妃菜"は一人しか居ないはずだから。



だから多分"妃菜さん"は"妃菜ちゃん"のことだ。





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