赤い狼 四
「……何?」
「え?いや、それだけなんスか?」
「何がよ。」
「感想とか…もっと言うのかと思ってました。それに隼人さんが優しいって聞いてもビックリしなかったんでこっちがビックリっス。」
「だいたい予想ついてたから。」
「そうなんスか?」
口を開けてビックリしていている雷太の口にズボンのポケットに入っていた飴を放り込む。
予想つくに決まってんじゃん。だって直接聞いたことあるんだもん。私の、この耳で。
『妃菜。』
あの優しい響きを。
チラッと雷太を横目で見ると口の中に急に固体が入ってきたのでさっきよりも驚いた顔をして口を閉じたまま固まっていた。どうした雷太。口が真っ直ぐになってるぞ。
「ち、稚春さん!急に入れないでくださいよ!」
「ハハッ、ごめんごめん。これ、お礼と口止め料ね。」
私を睨む雷太に笑いかけてズボンのポケットから七個飴を取り出す。雷太に一個、あとの三人に二個ずつあげて「さっきの、誰にも言っちゃダメだよ。」にこりと笑った。
「稚春さん!」
「教えてくれてありがとね。じゃあ上に行くね。」
「隼人さんがどう思っていようと俺は稚春さんの方が好きです!」
「…ありがとう。」