赤い狼 四





「こっち来い。」



「何で。」



「さみぃ。」



「知るか。」



「……おい、こっち来い。」



「優しく言えないの?」




ドアの近くの壁に寄り掛かって問う。




隼人が「はぁ?」顔を歪ませた。



たまには私のワガママも聞いてくれてもいいじゃん。




このままじゃ隼人が更に機嫌を悪くするだけだから、と口を尖らせて拗ねた真似をする。


香がこの前、男はこの仕草に弱いと言っていたのを思い出して咄嗟にやってしまったのだけれど。



これで隼人の機嫌が少しでも良くなれば香に盛大な拍手を送らなければ。出血大サービスで投げキッスもいいかもしれない。


あ。でも私の投げキッスで香が私のこと好きになっちゃったらどうしよう。学校に行った時に定番の人気の少ない体育館裏に呼び出されて「好きです!」なんて告白されたらどうしよう!いやぁああぁ。私には香はもったいないわ!!あなたにはもっと素敵な人がいるはずよ!だから私なんて止めるのよ!いや、いっそのこと




「止めてしまぇえええぇ!!」



「おい、妄想族。」




な ん だ っ て ?





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