赤い狼 四





予想外のセリフに手の内にあるものを床に容赦なく叩きつける。



それを目にした銀は珍しく慌てた様子で「嘘に決まってんじゃねぇかよ、稚春ちゃん!」私の足元にあるシルバーに輝くブレスレットを拾って私の左手に丁寧に置いた。





「で、本当はこれ、何なの?」




また俺の髪の毛とか言ったら前、連がしてたようにハゲ散らかすからね。そういう雰囲気を醸し出しながら聞く。



それは銀にきちんと伝わったようで「今度はちゃんと言うに決まってんじゃねぇの~。」先ほどとは打って変わった、のんびりした態度で私の顔を口角をゆるゆる上げながら見た。





「前、棗がブレスレットに何かを混ぜてもらうって言ってなかった?」



「あー、そんなこと、あったような。なかったような。」





銀の言う、"前"を思い出すため、首を傾げる。だけど完璧に覚えていないのか曖昧で、"多分"という言葉がしっくりくる"前"しか思い出せなかった。


でも、他に思い付かないしきっとあの時だ。




"《SINE》が守る姫"という意味を背負ったリングをブレスレットにすると棗が言っていた時。あれしかない。




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