赤い狼 四





「…っ、痛いじゃん!」



「無防備。」



「はぁ!?」




叩かれて痛む頭を押さえて隼人を睨むと隼人は無表情で私に近付いてきた。




「お前、俺に前言われた事忘れたのか?」




前?


前っていつの―…




「また俺に立てなくなる程キスされたいのか。」




隼人に言われた"前"の事が分からなくて思い出そうと必死になって、隼人と出逢ってから今までの事を一から思い出す。



その間、隼人は大きくてゴツゴツしているけど綺麗な手で私の髪の毛を楽しそうに手で遊んでいた。


そして、やっと思い出した。




「あああ、あれでしょ!無防備だからちゃんとガードしとけっていう話をしたやつでしょ!?」



確か、あれだ。棗に襲われそうになった次の日に言われたやつだ。




隼人の手の中で遊ばれている私の髪の毛を見た隼人が、切れ長な目でフワリと笑った事に胸をドキドキさせながら答える。



すると、隼人は



「あぁ、馬鹿な稚春でもちゃんと覚えてたんだな。」



と鼻で笑ってまだ弄っている私の髪を指にクルクルと巻き始めた。




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