赤い狼 四
ば、馬鹿って!酷い!
「馬鹿じゃない!」
「じゃあアホか?」
そういう問題なの?とツッコミたいけど、止めておいた。
だって、隼人だったら話がまともに出来ない気がする。
とにかく、私は早く隼人から離れたい。
まだ私の髪の毛をクルクルと弄っている隼人に気付かれないようにゆっくりと後退る。
そんなに私の髪の毛が好き?
変な趣味だ、とか思いつつも順調に隼人から距離をとる。
「なぁ、稚春。」
「はい!」
ゆっくりと慎重に右足を後退させていた私の耳に、隼人の低い声が入ってきて慌てて右足を戻し、顔を上げる。
すると隼人は唇の端をとても綺麗に上げて
「ガードしろとは言ったがガードする相手を間違えてねぇか?」
今まで見た事もない笑顔を私に向けた。
その瞬間、背筋に寒気が走った。
怖い、なんてもんじゃない。
怖い、よりもっと上の…そう、恐ろしいオーラ。
尋常じゃない程、黒いオーラを纏う隼人に思わず身を竦める。