赤い狼 四
隼人はそんな私を見てまたニッコリと笑う。
「ひっ。」
今度は恐ろしすぎて情けない声が漏れた。
顔は笑顔だけど、隼人はきっと、いいや。物凄く怒ってるだろう。
だって、隼人の背後に……
「し、死神さんが見えます。」
「そのキスマーク誰につけられた。」
私の台詞を無視して質問を私にぶつけてくる隼人。
そのマイペースぶりに少しだけ顔を顰めたけど、それよりも隼人が言った言葉が気になった。
「キスマーク?」
「稚春の"ここ"についてんだろ。」
左耳の下を右手で撫でてきた隼人に、少しだけ肩がビクリと跳ねた。
私のその反応を見て、隼人が悲しそうな顔をする。
「稚春、俺が嫌なら言え。嫌なら無理に"俺の女"をやらなくてぃぃ。」
「はや…と?」
「他の男がぃぃならそれでぃぃ。でも、それだったらもう俺に関わるな。」
「え?」
隼人の言葉に言葉を失う。
関わるな?それって…。
どういう事?
そう言おうと顔を上げるともう目の前には隼人は居なくて。
ドアがバタンッと閉まる音が聞こえた。