赤い狼 四
はぁ…。
目の前で俺を見上げて睨んでくる稚春を見て思わずため息を溢す。
今の俺と稚春の状態は突っ込んできた稚春のせいでバランスを崩し、床に一緒に倒れている状態だ。
しかも稚春が俺の上に乗っかってきていて、どっからどう見ても稚春が俺を押し倒しているようにしか見えねぇ。
それなのに、この状況で上目遣いプラス睨みって……可愛すぎんだろ、おい。
俺がそう思ってるのも分からずに
「痕とか何なの?ちゃんと何の事か説明して!分からないのに突き放されるなんて嫌だよ。」
俺の顔を見つめながら涙目になっていく稚春。
……勘弁してくれ。
髪の毛をグシャグシャと掻き乱しながら稚春の体を抱き締めて体を起こす。
すると、やっと俺の上に乗っかってた事に気付いたのか恥ずかしそうに顔を赤らめた。
ヤベ…その顔そそる……
じゃねぇや。
ポリポリと自分の頭を掻きながらよこしまな考えを頭から打ち消す。
これだから困るんだよ、稚春の天然さには。
この場で襲ってしまいたい衝動に駆られながら稚春から体を離す。
これ以上、引っ付いてたら手ぇ出しそうだ。