赤い狼 四
でも、その行動が稚春には理解できなかったらしい。
さっきからまだ潤んでいる目をぱちくりしながら俺を見上げる。
「お前…マジでその顔、俺以外に見せんなよ。」
「何で?私、そんなに変な顔してる?」
…………言うと思った。つぅーか、その逆だっつーの。
鈍感な稚春に呆れて喋る気をなくした。
言っても無駄だった。
そう思いながらガックリと肩を落としていると、何故か稚春は俺にゆっくり近付いてきて、前からすり寄るようにして抱きついてきた。
「…っ、」
ドキン、と胸が高鳴る。
「ねぇ私、不細工?だから、私が嫌になって《SINE》の姫を止めろって言ったの?」
"お願いだから捨てないで"
寂しそうに俺の目を見つめてくる稚春がそう言っているように聞こえた。
そんな訳、ねぇだろうが。
稚春に抱きつかれただけでこんなにもドキドキしてる俺が、お前にそんな事思うわけねぇ。