赤い狼 四
「はい。そうですけど。」
短くため息をついて声がした方に顔を向ける。
そこには、スラッとした足を膝上のスカートから覗かせている薄化粧をした女の子が立っていた。
「ちょっと、無視した方がぃぃんじゃない?」
「屋上までついてこられたら厄介でしょ。」
腕を掴んで耳打ちしてきた実に小声で返事を返すと、実はそっか。と言って私の腕を離した。
そしてすぐに階段の下で私を見上げている女の子の所に降りていく。
「…何か用?」
少し警戒しながら女の子に近付くとその女の子はフッと口角を上げて静かに笑った。
「そんなに警戒しなくても何もしないし何も言わないわ。それより、はい。」
「…?」
女の子は制服の上着のポケットから何かを私に差し出すと
じゃあね。
と片手を上げてスタスタと踵を返して歩いていく。
「え、ちょっと待ってよ!これ何?」
私の手には手紙らしきものが握られている。
この黒をベースにしたのって絶対手紙だよね。
女の子の後を追いながら自分の手に握られている物体の事を考える。