赤い狼 四
「お、おい!ゴジラの歩く真似とかしなくてぃぃ!床が抜けるだろーが!」
誰がゴジラだ。
銀があたふたと私の目の前で慌てる。
あぁ、なんかどうでもよくなった。
怒りを通り越して何も感じなくなった私は
足踏みを止めて棗の向かい側のソファーに体を静かに沈めた。
それによって視線は私に来ない筈なのに、ソファーに座ってからの方が視線をひしひしと感じる。
…何でなんだろう。
首を傾げるが、私がいくら考えても結果が出ないと最初から諦めた私は(つまり最初から考えていない)
一番的確に、分りやすく教えてくれそうな棗に視線を向けた。
すると救世主の仏様、棗様はすぐに私の視線に気付き、
稚春、元気にしてた?久しぶり。
と優しい笑みを見せる。
おぉ、感動。