赤い狼 四
「なんて酷い!」
「もう、耳元で喚かないでよ。煩いのよ、あんた。」
実の耳元で叫ぶと実はあからさまに嫌そうな顔をして耳を両手で塞いだ。
グレるぞこの野郎。
「まぁ、二人共そんなに睨み合わないで仲良くしようよ~。
クリスマスパーティーを三人で冬休みに入る前にするんだし~。」
ダンダンッとムカついて足踏みをしていたら香が私の肩をポンポンと軽く叩いてニッコリ笑う。
香の前世は天使だった筈だ。間違いない。
香の笑顔にウルッときた私は制服の裾でゴシゴシと涙を拭き取って
私も香と同じようにニッコリと笑った。
「三人でクリスマスパーティーができるならそれでぃぃ!満足!」
「たまには可愛ぃ事言うじゃない。」
「本当だねぇ。稚春もたまにはぃぃ事言うんだねぇ~。香はウルッときちゃったよ。」
クスッと笑いながら私の顔を覗く実と、頬に伝った涙をちゃんとハンカチで拭いた香。
実はいつもの嫌みだから気にしない。
でも、香も便乗してくるようになったとは稚春お姉さんは驚いたよ。
っていうか、それよりも香がハンカチをちゃんと出した事に感動。
私と違って女の子だな。おい。