赤い狼 四
なんてこったい。
雪の降りそうなこんな真冬に風の当たる屋上でブルブル震えているというのに、
そんな冷たいビームを受けたら凍ってしまうじゃないか。
いや、もう凍ってるのか?
自分の状況がよく分からなくなったから妄想を一時中断した。
いや、'実に中断された'の方が正しいんだけどね。
「これから三年生だから忙しくなるよねぇ~。」
私の妄想を耳に一切入れてなかった香が両手に息を吹き掛けながら大きい目で私を見る。
女の子の鏡だ。
「そうだね、忙しくなるね。」
長い香の睫毛を見ながら笑って言葉を返す。
三年生で慌ただしく過ごしていたらすぐに卒業か。
そしたら実と香にも逢えなくなるな。寂しいな。
「まぁ、卒業しても私等はいつでも逢えるじゃない。っていうか、逢いに行ってあげるわよ。いつでも。」
私の心の声が聞こえたかのように実が私の左肩に手を置いた。
「そうだよね。いつでも逢えるよね。」
実に笑いながら答えるけど、どうしても淀んでしまう心。
上手く笑えたかは分からない。