恋愛ビンタ
話の流れからして、どうやら私を傷つける気はないらしい。

それどころか、謝罪したいような雰囲気も見える。

少しホッとする。


「お前、馬鹿だよ。あんな状況で惚れるか、普通」


見合い相手の爆弾発言に、再び私は口もとを抑える。

ほ、
惚れ?

誰が、
誰を?


「…うるせえ」


そのつぶやきは、惚れた云々のきっぱりとした肯定だった。

え?
この人、
私のこと、
好きなの?

あまりのあり得なさにぐらぐらする。


「諦めたら?お前あのとき言ってたろ。権力者にもの言わせるしたたかなお堅い公務員様だって」


見合い相手の言葉は再び私をえぐる。

…この野郎。

だが私以上に乱入男は、この野郎、と思ったらしい。

暗い声を一転させ、怒鳴るように言う。


「あんないい女いねえよ!!」


その剣幕に、圧倒される。
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