恋愛リップ
タイトル未編集
「他の奴らには、内緒な」
その言葉にきっと、
落とされた。
喉が凍りそうなくらい寒かった冬に、私の唇は音をたてて割れた。
口の中に鉄の味が巡り、カミソリで薄く撫でられるような痛みにうまく笑えない。
でも、言ってしまえばたかが唇が割れただけだし痛いといったところでどうしようもないので、黙って舐めながら授業を受けていた。
放課後、帰ろうとしていたら担任の先生に手招きされた。
近づいていくと、少し周りを気にしながら袋を渡される。
開けてみると、買ったばかりらしいリップが入っていた。
「割れたんだろ、唇」
先生は少し微笑む。
「痛いよな。俺もたまに割れるからわかる」
そしてリップを指差して、
「やるよ、それ」
と言った。
「他の奴らには、
内緒な」
そのとき私は
恋に、落ちた。
その言葉にきっと、
落とされた。
喉が凍りそうなくらい寒かった冬に、私の唇は音をたてて割れた。
口の中に鉄の味が巡り、カミソリで薄く撫でられるような痛みにうまく笑えない。
でも、言ってしまえばたかが唇が割れただけだし痛いといったところでどうしようもないので、黙って舐めながら授業を受けていた。
放課後、帰ろうとしていたら担任の先生に手招きされた。
近づいていくと、少し周りを気にしながら袋を渡される。
開けてみると、買ったばかりらしいリップが入っていた。
「割れたんだろ、唇」
先生は少し微笑む。
「痛いよな。俺もたまに割れるからわかる」
そしてリップを指差して、
「やるよ、それ」
と言った。
「他の奴らには、
内緒な」
そのとき私は
恋に、落ちた。
< 1 / 7 >