恋愛リップ
先生は何かを吹っ切るように息を吐き、私を見つめた。


「…なあ」


ビクッとする。

その声に、ためらいがなかったから。


「俺のことが、好きか」


先生を見つめる。

はい、と、答えようとした。

答えようとしたけれど。

私の言葉は止まった。

先生の目には、何らかのの決断があった。

真正面から私に向かい合う心があった。



―――――ふられる。



そう、思った。


きっと、曖昧にかわすことなく、見つめることすら許されないほどにこの思いを断絶するつもりだ。

今まで以上に、教師と生徒、大人と子供という、どうすることもできない壁を頑丈に仕立てて、私を拒絶するつもりだ。


震えそうになった。

恐怖で。

先生が私を好きじゃないのは、仕方ない。

でも、私が先生を好きなのは私の勝手なはずだ。

それすら砕かれそうで、逃げ出したくなる。


「好きか」


繰り返し、問われる。

体が、震える。


好きです。
好きです。
何か悪いですか。

私の心は私のものだ。

いくら先生への思いだからっていっても先生が操っていいわけない。

そう、気を強く持って先生を睨みつけようとした。

なのに、できなかった。

なぜならその表情が……、



ーーー困惑ーーー…。



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