死せる朝日の会
だけど、女を見る目はなかったらしいな、こんないい女を置いて行くなんて。」
徐々に笑顔になっていくリンダを抱きしめながら、俺は自分のやるべき事を理解していった。
その時である、部屋のドアノブが回る音がした。俺達はびっくりして反射的に視線を送る。するとそこには着物を着た若い男の姿があった。
「あれ? 取り込み中だったかな? すまん、出直してくる」
と言ってドアを閉めようとしていた。
「あっ、こら。ちょっと待てって。ルーちゃんてば、待ってよ。」
慌ててリンダが彼を止める。
ルーちゃん? もしかして、昼になったら治療に来てくれるはずのルーベンスか? 名前からしてバリバリのヨーロッパ系を連想していたんだけど、目の前の人物は、絵に描いたような日本人だ、しかも着物が良く似合う、人柄の良さそうな人物に見える。
「あの? もしかして俺の治療を?」
人間関係がわからないので、とりあえず丁寧に問いかける。もし、気難しい人物だったら治療してくれないと困るしな。 着物の裾を引っ張られながら戻って来た彼は、やおら頭をかきながら俺を見た。
「久しぶりだね、しばらく見ない間に背が伸びたかな?」
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