死せる朝日の会
「いったいどれだけレベルを上げたら武器が揃うのかしら、全く出口の見えないゲームよね。」
と、ぶつぶつ言ってる妙なのだが、ゲーム内の細かい演出や会話を、全て飛ばしている彼女は、きっといつまでも先には進めないだろう。でも、その状況を楽しいと感じてるみたいなので、あえてアドバイスはしない。それも優しさなのだろうか。
「ねえ。」
妙にしては珍しい、ゲーム中に話しかけてきた。 俺は何気なく
「ん?」
と返事をした。
「なんか最近、やたらとニュース見てるよね? 何か気になる事でもあるの? 私の親の事? 」
はて? 確かに妙の両親の事は気になる。 しかし、言われてみれば最近、やたらとニュースを見ている気がする。 特に海外のテロ関連ニュースは、気になってしょうがない。
「まあ、それもあるがな。 俺も大人になったんじゃないのかな。」
俺は妙みたいに器用ではない。ゲームに集中している為、それらしい返事を返した。
「ふーん、そうなんだ。」
これまた適当な返事で返された。 たわいない二人だけの世間話、どこにでもある日常。 そんな日がいつまでも続けばいい。 と、しみじみ思っていた矢先、妙の携帯が大音量で鳴りだした。
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