死せる朝日の会
「ごめん…。」
それしか言えなかった俺だが、ユリスは、
「気にしないで、記憶がないんなら仕方ないよ。」
と言ってくれた。その姿が、なんとも言えず可愛らしくて、思わず抱きしめてしまいそうだった。
それからしばらくして、アリやパステル達が、ユリスと何かを話し始めていたのだが、俺には何を言っているのかわからなかったので、なんとなく教会の中を見渡していた。その時である。
「あの時の教会に似てるな。なんて考えてましたか?」
俺の座っていた長椅子に、いつの間にか誰か座っていた。何の気配も無く声を掛けられた俺は、びっくりして椅子から転げ落ちてしまった。驚きのあまり間抜けな声を出してしまった為、皆俺に一斉注目した。
「久しぶりですね。あの時以来だから、実に懐かしいです。」
突然現れた人物は、にこやかに笑いかけた。たぶん俺と同じくらいの年齢だと思える、すごく落ち着きのある雰囲気の女の子だ。 髪は長くて綺麗な黒色、手には湯呑みを持ち、何故か場違いな浴衣を着ていた。
「あの教会?」
俺は椅子に座り直して問いかけた。
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