死せる朝日の会
もともと俺はユリスの彼氏だ、そして妙子とも親しい。だからこそ彼女のわずかな表情の変化を見逃さなかった。
「わかった。この話はやめよう、悪かった。」
ユリスは、気にしないでね、ごめん、とだけ言うと、下を向いてしまった。
俺は話題を変えるべく、ユリスに一枚の手紙を渡した。 それは数日前、ユリスからもらった手紙。不思議そうに俺を見る彼女に、
「二人だけで話すのって、あの時以来だな。」
今にして思えば、あの時既にユリスになっていたんだな。
「そうだね、あの時は精神的に不安定だったから、まともに話もできなかったよね。 何回経験しても慣れれないよ、この奇妙な感覚はね。 特に今の私は完全にユリスになっている。だから、あなたの大切な神崎妙子はもういないの、ごめんなさい。」
ユリスの発した言葉に、俺は少なからずショックを受ける。そうだ、確かに彼女の言う通りだ、目の前にいるのは妙じゃない。ユリスと言う名の別人に他ならない。だからこそ、俺の何気ない会話が気になったのだろう。
< 82 / 258 >

この作品をシェア

pagetop