死せる朝日の会
俺の言葉にしばらくは黙っていたマリーだったが、
「記憶が無いとは面白いですね。いつもの不遜な感じが全くしない。まあ、そんなあなたも良いですね。」
ずっと無表情だったマリーは、立ち上がり俺の頭を両手で挟んだ。そしてそのまま強引に俺キスをする。座ったままの俺は、逃げきれずになすがままだ。 そして唇を離すと抱きついてきて、小さな声で俺だけにささやいた。
「気になるんですね? 私が男なのか女なのか?」
図星をつかれた俺は、驚いてマリーの顔を見た。その時、急に首を動かしたもんだから、同時にこちらを見ようとしていたマリーと再びキスをしてしまった。
「あら、大胆。」
アイリスは口に手をあて、楽しそうに笑っていた。
「いきなりですね? こんなところで困ります、惚れましたか? まあ、私ならいつでも…」
どうした? 突然黙ってしまったマリーは、俺の後ろのほうを見ていた。なんとなく嫌な予感がする。
「今日はやめたほうがいいですね。あなたの可愛い彼女に怒られそうです。」
ああ、やっぱり。俺はゆっくり後ろを振り返る。
「浮気者。」
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