恋愛アンフェア
その人は手を伸ばし私の頭をくしゃっと撫でてから、微笑んだ。


「君は素敵ですね」


す、すてき?

喧嘩買いに来て逃げようとしていた弱虫なんですが…。

先生は女とその取り巻きを冷たい目で流し見て、非情ともいえる微笑を見せた。


「この子に何か用ですか?」


そっと庇うように抱きしめられこんな時なのに胸が高鳴った。

ばか。

私。

なに考えてる。


「あんまり馬鹿な事しないでくださいね」

「わ、私はなにも」

気丈に言い訳をしようとした女教師は無言の眼光だけで黙らされる。


「頭悪ィな、お前」


数学教師の口調が一変した。


「俺がここにこうして居るって時点で、どっからどこまで内情知られてるかも予測できねェのか?」


それは確かに昔兄を守り私の心を奪ったその声だった。


「教え子相手に汚え事やろうとしたお前は教師じゃねえ。さっさと引け」

その声は返答を求めていなかった。

お腹に響く絶対的な命令。


「帰って辞表書く練習でもしてろ」
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