恋愛アンフェア
…面倒臭い奴に捕まった。
目前でゆるい微笑を見せる男に、こめかみがピクつく。
草食系通り越してむしろ『草』みたいなくせして、何だこの粘り。
「で?」
ニコニコ余裕をかますその姿が憎らしい。
「誰をぶっ飛ばすんです?」
私の笑顔が引きつった。
事の起こりは二時間前、私が廊下で
「ぶっ飛ばす」
と呟いてしまった所にある。
それをこの男、数学の教師に聞かれた。
物騒な発言に敏感に反応した彼は、無害そうな顔で私を生活指導室に引きずり込み、こうして笑顔で威圧をかけ続けている。
ゆるいデスマス口調に眼鏡。
今時長髪を後で束ねてるそのゴムは輪ゴム。
怒っても威厳無し。
笑っても光無し。
女生徒からは気持ち悪いと言われているが何故か不良ウケがいい不気味さ。
スポーツ全般には全く参加せず日陰でお茶を飲んでいるような彼のモットーは
平和主義。
そんな奴の前で「ぶっ飛ばす」は確かにまずかった。
が。
その「ぶっ飛ばす」に至るまでにも経緯がある。