恋愛アンフェア
兄の先生だった人を思う。

あの人に恥ずかしい人間にだけはなりたくない。

真っ直ぐな私の目を見て、先生は諦めた様に息を吐いた。


「…わかりました。ならせめて、どこで何時に待ち合わせかだけでも教えてくれませんか」


………。

……えらくピンポイントな質問してきたな…。

訝しんでいると微笑まれる。


「保健室の先生の件に足を突っ込もうとしているんですよね?」


度肝をぬかれた。

正直、びっくりしすぎて叫ぶところだった。

何。

何この人。
超能力者?

どこまで知ってるの?

瞬きすら出来ずにいる私を、相変わらず覇気の無い笑顔で覗き込みながら続ける。


「先生、これでも耳年増ですよ」


……………。

…うん、それ、多分、使い方間違ってる。

少し見直すとこれだよ。

笑いそうになった。

でも。


「この件は先生が何とかします。だから君は先生を信じてくれませんか」


その声が意外にはっきりしていて


「これは教員の問題でもある。君だけがリスクを負うのはフェアじゃありません」


私は突然悟った。


この人多分
初めから全部知ってた。
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