Tokyo Midnight
「・・・美菜子には苦労させないと、約束してくれ」

お父さんはそう言うと、ぽつりぽつりと昔話を始めた。

実家は小さな喫茶店だった。

お父さんはそのころサラリーマンでお母さんが喫茶店を手伝っていたけれど、リストラに合い家業の喫茶店を始めるもなかなかお客が入らず、お母さんが得意の料理でお弁当も売り始めたこと。

なんとかして、稼ごうと早い時間から夜遅くまでお店を開けて、休みもほとんど取れず私たちを旅行にも連れていけなかったこと。

進学したいという私に進学費用を出してあげられなかったこと。

「もちろんです。お約束します」

彩斗さんがそう微笑むと、お父さんは照れたように「うむ」とだけ返事をした。

それはお父さんなりのOKの合図で、それと同時に菜々子が部屋に飛び込んできた。
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