Tokyo Midnight
「へぇ・・・なかなかいい女じゃん」

驚いて振り向くと、その人はまっすぐに私のところに歩いてきた。

私は無造作にいくつかボタンを止めただけのYシャツの前をぎゅっと握り締める。

「ゆうべ、どうだった?」

その人は児嶋さんよりもさらに背が高く、私の目の前まで来ると洗面台に押し付けるようにして立った。

そしてゆっくりと洗面台に両手をつくと、唇が触れそうな位置まで顔を近づけて言った。

「・・・ねぇ、俺とも試してみない?」

洗面台についていたはずの手がいつの間にかYシャツの裾を持ち上げるようにして脚を撫でる。

児嶋さんとは違うタイプの香水がふわりと私を誘惑する。

精一杯体を反らして遠ざけても、あと少しで唇が触れてしまいそうになる。
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