Tokyo Midnight
「やめて・・・」

気がつけば涙が出てきて、私の視界が曇る。

「・・・いただきまーす」

ゆっくりと慶介の唇がそこに近づく。

熱い息が先端にかかって、また嫌悪感で体が震える。

「そんなに怖がらなくても、気持ち良くしてやるからさ」

もうだめだ、そう思った瞬間。

不意に部屋の扉が開いた。

「慶介!!」

その声は彩斗さんそっくりだったけど、扉の影から現れたのは全然別の知らない人だった。

「和兄・・・」

和兄と呼ばれたその人は、つかつかと部屋に入ってきてベットのそばまで来ると、いきなり慶介の頬をひっぱたいた。

でも、それが意外と強い力だったのか顔をあげた慶介の口の端は切れて血が出ていた。

私は慌ててシャツの前をあわせると、片手でスカートのすそを直した。
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