貴方の愛に捕らわれて
「鬼虎と呼ばれた男にも、人の心があったって事だ。安心したよ。
頭の大事なモンだ、俺達も全力で守りましょう」
龍二はそう言うと智也の肩を叩いた。
「組長、止めて下さい!
俺、あんな幸せそうな顔をした組長を初めて見ました。
何かすっげぇ嬉しかったです。
微力ですが、俺も全力で香織さんの事、守ります」
智也はそう言うと、目にうっすらとにじむものを袖でこすった。
俺は今まで、ずっと一人だと思って生きて来た。
だが、間違っていたようだ。
こんなにも俺を思ってくれる仲間が居た事に、それに気づかせてくれた香織に、心から感謝した。
俺は、生まれて初めて感じる幸福感に酔いしれながら、これからの事に思考を巡らせた。
先ずは香織の母親と話しを付けなければならない。
手切れ金はいくらでも構わないから、二度と香織に近づかせないよう、龍二に指示を出して、香織が風呂から上がるのを待った。
猛 saido end