貴方の愛に捕らわれて
教科書やらノートといった学用品が詰まったダンボール箱が一つ。
制服と体操服を詰めた小さなダンボール箱が一つ。
後はノートパソコンが一台。
荷物はたったこれだけ。荷造りは10分もかからず終了した。
先に大きなダンボール箱を車に運んだ智也が戻って来た時にそれは起きた。
智也が玄関のドアを開けると、そこに小さなダンボール箱が置かれていた。
香織の姿を求めて奥に進もうとした時、不意に女の声が聞こえた。
「分かってるとは思うけど、もし店が摘発を受けても私の名前は出さないで。迷惑だから」
『……はい』
「義務教育は済んだ事だし、これ以上アナタの面倒はみきれないわ。
それに丁度良かったわ。私、彼と一緒に暮らす事にしたの。だから分かるわね?」
『はい。お世話になりました』