貴方の愛に捕らわれて
感情を無くした虚ろな声で、そう返事をする香織。
盗み聞いた会話の内容の酷さに、智也は言葉を失った。
そっとドアを開け、その隙間から中を覗けば、リビングの机にコトリと鍵を置き深々と頭を下げる香織の痛々しい姿が見えた。
力一杯握りしめられた小さな手が、微かに震えていた。
まだ話しは終わっていないようで、更に言葉を続けようとする母親を遮るように、智也はリビングに踏み込んだ。
智也の報告を聞き終えた俺は、怒りにまかせてデスクの上のクリスタルの灰皿を投げつけた。
灰皿が当たった壁はへこみ、クリスタルが砕け散る。
なおも怒りの収まらない俺は、周りの物に当たり散らしたが、酷く傷ついたであろう香織のことが気になり、なんとか怒りを静めると智也に香織の様子を聞いた。
「香織さんには、荷物の整理が終わったら、お休みになるように言ってあります」
「そうか。智也、ありがとな」