貴方の愛に捕らわれて
10
びっくりして身を堅くする私を抱き上げたまま、洗面所を後にする猛さん。
『下ろして』と言う間もなくリビングまで運ばれると、そのままソファーに座った猛さんの膝の上に、横向で座らされた。
猛さんの腕の中にすっぽりと収まった私の視界が、不意に真っ暗になり、瞼の上に冷たいモノが乗せられた。
ヒンヤリとした感覚にびっくりして、瞼に手をやれば、その手は瞼に触れることなく、宙で捕まえられる。
「濡れタオルだ。冷やさないと腫れるだろ」
私の手を取った猛さんは、先程の質問を耳元で優しく繰り返した。
猛さんの腕の中は、何処よりも安心できて、耳元で囁かれる低音ボイスも、不安に怯える私の心をほぐしてくれる。
だからなのか、私は心の内を素直に打ち明けた。
『猛さんは、私の何処を気に入ってくれたのかなって…』